vol.19 美女と野獣

これを書いている時点で、私は高等学校の非常勤講師として音楽の授業を担当して8年となります。

実は、1997年から5年間、専任教員として赴任していた経験がありました。

その後、音楽活動に専念したいという私の我儘によって退職していましたが、

2006年から非常勤講師として戻ってきてくれという学校側からの要請によって、同じ学校に再び教壇に立ったのでした。

 

5年間の専任教員としての経験から、4年間のブランクはなんとか埋まるだろうと予想していましたが、

かつて経験していた生徒たちとはまるで違う生徒たち、

学校の環境も変化していて、非常勤講師1年目は悪戦苦闘の連続でした。

「このままではいけない」と考えた私は、これまでに経験したことをそのまま活用した授業運営を捨てることとしました。

 

2年目、学校も新しいコースを設置して、活路を見出そうとしていました。

新しく導入した「女子の特化したキャリア教育」という学校方針にあわせ、いろいろと音楽教育改革を遂行していきました。

というのも、私は非常勤講師として勤務しました8年間、一貫して高校1年生の「音楽Ⅰ」という科目を担当してきました。

この科目、実は科目運営がなかなか難しいのであります。

この学校では「音楽Ⅰ」を選択科目として設置してあるのではなく、必修科目として設置してましたので、

受講する生徒の音楽に関する関心や興味は千差万別。

そこで私が考えたことは、ホームルームクラスで音楽の授業を受ける生徒たちに対して、

どのような思い出や記憶をクラスに付けてあげることが出来るのか、

また音楽を通じてどのように人格形成を促すのか、

音楽を通じて集団活動力をどのようにあげていくことが出来るのか、

つまり、音楽の授業を通じてのキャリア教育の成果を築くべきと考えたのでした。

そこで考えたプランは実に様々でしたが、

音楽の授業1年間の集大成としてクラスでチームチャレンジをこなす発表会を年度末の2月に実施することでした。

その内容がミュージカル「美女と野獣」を公演するというものでした。

 

 

オリジナル作品があまりにも長大な時間がかかりますから、授業時間での発表会には短縮ヴァージョンが必要です。

そこで、ストーリー展開は強引ですが、20分の公演時間に短縮して、曲間はナレーションを付けることにしてという、いわばオペラスタイルといいますか、演奏会形式の上演としました。

ということで、私は生徒たちに音楽的な指導は責任を持ってこなすが、立ち位置などの動きは最低限私が決め、

実際の振り付けや演出は完全に生徒任せとしました。

このため、音楽は同じ作品なのに、クラスによって全然違う公演内容となります。

 

 

この企画1年目はとにかく音楽にするだけで精一杯の状況。

ところが、音楽が切れ目なく流れて、クラス全体で一つの音楽作品を作るのだという気概が見ていただいた先生方や実際に出演したクラスの生徒たちにも伝わり、

当時は先導的な教育プランだとの評価をいただきました。

「この企画は継続していかなければならない」と思ったものです。

 

 

公演内容が一気にレベルアップして、充実した内容を示してくれたのが、

企画4年目の公演でした。

演出内容が急激に上昇、音楽的なクォリティーも上がり、当時私が担当していた4クラスとも、充実感や達成感が支配した公演となりました。

この時の様子が学校のHPにあります。こちらをご覧ください。

また、その次の年の公演も学校のHPにあります。こちらもご覧ください。

 

 

以後、この発表会企画、凄まじい発展を遂げていきました。

今年度私が担当した3クラスは過去にない素晴らしい内容の上演となりました。

涙脆い私が号泣しただけではなく、生徒たちも、ご来場いただきました担任の先生も涙を流すという、素敵な時間を過ごすことが出来たのです。

 

 

この発表会の教育意義は多岐に渡ります。

純粋に音楽教育の意義に留まらず、ホームルーム活動に関与したことにもなり、

まさに人間教育の現場となります。

私なりにはどのような意義があるのか、自己分析は出来ていますが、

私が気が付いていない成果もあるようで、可能性は無限ともいえます。

高等学校での音楽の授業は選択科目として設置されているケースがほとんどですが、

このようにホームルームクラスで取り組む必修科目としての音楽の授業も有益なものです。

そこで、これは私個人の想いですが、これまでの発表会の軌跡を学問として研究してみたいなあというのが、私の近未来的な夢となりました。

時間が出来ましたら、学術論文を執筆してみるつもりです。

 

2014.2.11