vol.2 クラリネットとのデュオ

前回のコラムではクラリネットとのトリオに関する記述をいたしました。

今回はクラリネットとのデュオに関して語ってみたいと思っています。

 

クラリネットとコントラバスのためのデュオは20世紀以降に作曲された作品しか私は知らないのですが、

現在私が所有しています楽譜は4曲あります。

 

・服部和彦/幻影

・福士則夫/パラクタシス

・P.ヒンデミット/クラリネットとコントラバスのための二重奏曲「音楽の花園」
・M.グールド/ベニーズ・ギグ~クラリネットとコントラバスのための8つの小品

 

実は2002年、服部和彦/幻影は演奏しています。

この時は、演奏会主催の方からの依頼で演奏しました。

ベートーヴェン
ベートーヴェン

次にデュオを演奏したのは2009年でした。

ただ、この時はオリジナル作品ではありませんでした。

実は、ベートーヴェン/クラリネットとファゴットのための二重奏曲第3番を演奏しました。

この時はコントラバスがソロチューニングといって、ソロを演奏する際によく使用するチューニング(通常よりも長2度高く調弦されています)を採用して演奏していた演奏会だったので、

原曲の調性である変ロ長調ではなく、短2度低いイ長調で演奏いたしました。

クラリネットもB管ではなく、A管を使用していただきました。

 

そして、この度、2013年3月23日にデュオ作品を2曲取り上げることとなりました。

この2曲、日本での演奏頻度は極めて低い作品でして、

まずもって知られた曲ではありません。

市販されていますCDを探すことは困難でありまして、

私自身録音を探し切れていません。

ですが、長年取り上げる機会を探していた想いがありまして、今回演奏を実現するに至ったのでした。

ここでは簡単ではありますが、この2曲を曲目解説してみたいと思っています。

 

 

パウル・ヒンデミット
パウル・ヒンデミット

ヒンデミット(1895-1963)が1927年にチェロやコントラバスを嗜む妻のために作曲されたのが「音楽の花園」。

この曲は夫婦で楽しむための極めて私的な目的で書かれたのでした。

ということは、ヒンデミットはクラリネットも吹けたのでした。

短い小品が9曲、全曲でも10分程度の演奏時間です。

ちなみに、演奏を楽しんでいたヒンデミット夫妻の力関係、

恐らくは奥さまは「鬼嫁」だったのでは?

どうしてかって?

この作品の6曲目は「ライオン連隊の行進曲」というタイトルがありまして、

副題には「W.大佐に捧げる」とあります。

この「W」とは、妻の愛称であり、ヒンデミットは彼女に送るカードにはライオンのイラストを入れていたのだとか。

なぜ、ライオン?彼女の星座は獅子座だからなのでしょう。

でも、本当にそれだけが理由?

だって、妻がライオンですよ、きっと怖かったに違いないですよ。

 

それにしても、音楽内容は極めて多彩。

無機質で即物的なものもあれば、不思議な擬古典主義の音楽に聞こえたり、

ユニークな風景もありと、

短い演奏時間の中にもたくさんの音風景が味わえます。

 

 

モートン・グールド
モートン・グールド

モートン・グールド(1913-1996)の名前をご存知の方は、ひょっとしたら少ないかもしれません。

彼はアメリカのピアニストでもあり、作曲家でもあり、編曲家でもあり、指揮者でもあるという、なかなかのマルチな人。

クラシック音楽をたくさん書いているのですが、作曲してきた曲は実に様々なジャンルに亘っています。

ベニー・グッドマン
ベニー・グッドマン

彼が書いたこの「ベニーズ・ギグ」は、ある重要なクラリネット奏者との友情から産まれたものでした。

そのクラリネット奏者とは、スウィングジャズで有名なベニー・グッドマン(1909-1986)でした。

つまり、彼のためにこの作品が作られたということです。

まずは7曲を1962年に行われたグッドマンのロシアツアーのために作曲され、

残り1曲が1979年にグッドマンの70歳の誕生日祝いのために書かれたのでした。

ということで、曲のスタイルはジャズのもの。

私はほとんどPizzicato奏法(指で弦を弾くこと)に支配されます。

クラシックをベースに活動している私やご一緒していただけますクラリネット奏者の彼女にしてみれば、実に新鮮な楽しみを味わっています。

 

 

実は今年がヒンデミットが没後50年、グールドが生誕100年と、

メモリアルイヤーであります。

このことに気が付いたのはプログラムが確定したあとのこと。

あまりの偶然の一致に極めて驚いていますし、

実はとてもうまく融合することの出来るこのデュオの編成がじっくりと味わえるものと思っています。

今回の公演だけに終わることがないことを強く祈っていますし、

まずは、今回の公演で、この珍しい音楽を一緒に楽しんでいただきたいと思っています。

 

2013.3.8