vol.33 CMで流れるクラシック音楽

音楽を職業としてるからなのか、普段何気になくテレビを見ていて、

民放の番組には必ずありますCMで時々使われるクラシック音楽には、

ちょっとした反応が私には出てしまいます。

有名な曲が使用されての場合は、大した反応もなく、別にそのCMの印象は私には残らないのですが、

たまに、「お、こんな無名な曲を使うのか」と思うこともしばしば。

その使われ方によっては、私に絶大なインパクトを残すことがあります。



今から2年前の2013年の時、まさに私のツボにはまったCMがありました。

お茶の清涼飲料水などを販売している伊藤園、

その会社の製品で「お~い、お茶」がありまして、

そのCMで使用されているクラシック音楽に大きな関心があったのでした。

「え、どんな曲?」と思われたり、

「知らん曲やなあ」とか思う方もいらっしゃるのでは?

さて、その曲とは?



アレクサンドル・ボロディン
アレクサンドル・ボロディン

使用していた曲の正解は、

帝政ロシアの時代に作曲家として活躍、

本業は科学者で医者でもあった、

アレクサンドル・ボロディン(Alexsander Borodin 1833-1887)が作曲した

弦楽四重奏曲第2番ニ長調より第1楽章が原曲でした。


CMでは、本来の弦楽四重奏での演奏ではなく、

様々な楽器によるアレンジで演奏されています。

そのアレンジの手法も、やはり音楽家としては気になるところ。

このアレンジの手法も、ヴァージョンによっては、私には「あ、このアレンジは素敵だなあ」とか思ったり。

このCMの音楽、なんとこのコラムを書いている現在も流れていまして、

つまりは、2年間もCMを見て、ボロディンの作品に反応してしまうこととなったのでした。


さて、CMですから、さすがに15秒や30秒で演奏は終了してしまいます。

本当はフルサイズで演奏すると8分以上はかかる楽章。

でも、この曲、愛が溢れているというか、幸せな気分にしてくれるというか、

一度聞けばすぐに気に入るはず。

事実、私もこの曲を初めて聞いたのがFMラジオからの演奏。

確か、1991年くらいの時だったか?

一聴でその曲の虜になったものでした。



ところで、私のようなコントラバス奏者やピアニスト、指揮者といったジャンルで活動をしている身分としては、

弦楽四重奏というジャンルは、まず演奏体験を持つことはないジャンル。

でも、この編成の曲を聴くことは昔からとっても好きでした。

だって、名曲が山ほどあるのですからね。

なので、楽譜を眺めては「あ~、なるほど」と音楽の勉強にさせてもらっています。

ですが、このボロディン体験は、私に「演奏したい」という欲望に火を付けてしまったのでした。

じゃあ、どうやって?



非常に幸運なことに、2013年夏に、CMで使われている第1楽章ではなく、

実はこちらの方がクラシック音楽愛好家では有名な第3楽章の「ノクターン」の演奏体験を持ちました。

なんと、チェロとピアノによるヴァージョンの編成の楽譜があったのでした。

そこで、ピアニストとしてまず演奏体験を持ったのです。

この時、そりゃ凄まじく勉強しましたよ。

ピアノを弾きながら「ここは第2ヴァイオリンとヴィオラの内声部分」とか思いながら、そのような音を意識したり、

明らかにピアニスティックなこととクァルテットとしての響きの両方を目指していた私、

凄く幸せでした。


2014年3月、今度はこのノクターンをコントラバス奏者として体験しました。

私が活動しています室内楽グループ

「クラリネット、コントラバス、ピアノの愉快なトリオ」公演で、アンコールとして取り上げたのでした。

この楽器の編成に私がアレンジをしました。

でも、まだCMで使用していた第1楽章はこの時点では演奏体験がありませんでした。


そこで、2015年4月、私が指揮者として関わっていますアマチュアのマンドリンアンサンブルの公演で、

ようやく第1楽章の演奏となりました。

この時は第1・3楽章のみ取り上げての演奏でしたが、

それでも18分の演奏時間がかかりまして、アンサンブルのメンバーにとっては、なかなか精神力も体力も必要なハードな曲でした。

でも、このアンサンブルのためにアレンジをして、

指揮者としてこのボロディンを体験出来たことを大変嬉しく思っています。

ほぼ1年かけて練習に取り組み、つい先日本番を終えて、

今では取り組みが終わってしまったことへの寂しさも感じていますし、

勿論、楽しい思い出にもなっていますし、

聞きに来てくださったお客様からも好評でした。


確かに、私のような音楽活動の状態なら、さすがに全楽章を取り上げることは困難を極めますが(でも、弦楽合奏版が全楽章あるようですけど)、

これでも、クァルテットの名曲に関わるなんて、夢の世界ですよ!



ということで、そろそろコラムをまとめに入らないと。

CMで流れるクラシック音楽、

扱われ方によったら、確かに企業成績に関わるほどの重要なインパクトがあるのでしょうが、

私のような音楽家にとっては、使われ方で演奏活動に影響が出ることも。

これ、立派な文化貢献なのかも?

たかがCM,されどCM。

でも、社会に与える影響は、案外絶大。

これからCM製作をされる方には、センスある音楽の使い方をしていただきたいですね。

だって、こんな素晴らしいことになるのですからね。

演奏者としても聴衆としてもね。


2015.4.21