vol.5 動物の謝肉祭

カミーユ・サン=サーンス
カミーユ・サン=サーンス

先日、ある演奏会に足を運び、そこで演奏されていた曲が妙に懐かしく思い、そして再び演奏したくなった曲がありました。

その曲とは、19世紀フランスの作曲家、

カミーユ・サン=サーンス/組曲「動物の謝肉祭(動物学的大幻想曲)」なのです。

実は、私にとって、この曲はとても大切な曲なのであります。

今回のコラムでは、その想いを語ります。

「動物の謝肉祭」は全部で14曲からなる組曲です。

随所に様々なパロディーが込められたユーモアあふれる曲でして、

現在でも非常に人気のある曲といえます。

ただ、あまりにも冗談が過ぎたのか、サン=サーンス自身は生前に公の場にこの曲を出版することを禁じていました。

そりゃそうかもです。

現代の時代に、パロディーとして扱った別の作曲家の作品がほぼ無許可に使われているものを出版なんかすれば、

間違いなく著作権違反となりますからね。

ただ、1曲だけ、生前に出版されたものがあります。

13曲目の「白鳥」は、チェロの素晴らしく優美なメロディーが有名でして、

これは大真面目に作曲されたものなので、公に発表されたのだとか。

 

コントラバス奏者である私にとって、この組曲は非常に重要なレパートリーなのです。

2003年から2009年の間に合計14公演を行っています。

2010年以後はこの組曲の演奏に関わることはないのが残念ですが、

上記にあります公演回数は、私の演奏活動歴の中でも突出しています。

 

 

5曲目「象」の楽譜
5曲目「象」の楽譜

まず、なんといっても5曲目の「象」は世界で一番有名なコントラバス独奏曲といっても過言ではないでしょう。

世界で一番?そのはずです。

だって、有名なコントラバスの曲って、他に思い浮かびます?

ほらね、出てこないでしょう。

この「象」だけでも、私は1998年以後、たくさん演奏しています。

回数は数えきれないでしょうねえ。

そして、案外技術的には難しくないので、レッスン教材としても使用しています。

そうそう、コントラバス奏者って、ソロには恵まれないものなのですから、

こういう親しみやすい小品は大切なのですよ。

 

 

2006年8月公演(この時はあにまる・お~けすとらではありませんでしたが)
2006年8月公演(この時はあにまる・お~けすとらではありませんでしたが)

ところで、私が過去に14公演したものの全てにおいて共通した脚色があります。

それは、ナレーションが入っているということ。

2003年に私の母校である京都市立芸術大学出身者で組織されましたユニークな楽団

「あにまる・お~けすとら」(ちなみに、私はその楽団代表です)公演で、

ナレーションを導入したのでした。

ナレーション原稿は私が作成。

当時、この演奏は様々な方々から好評をいただきました。

以後、楽団以外でも演奏する際、このことがヒントになったのか、ナレーションが入った演奏にしか立ち会うことがありませんでした。

 

過去に演奏した時のどれもが私には思い出深く、またお客さんも喜んでいただいたことは大きな励みになっています。

普通に演奏するだけでなく、ナレーションにあわせて演奏者も演技をしたりといった工夫も随所に盛り込まれて、

「音楽って、こんなに楽しいものなんだ」と思っていただけるようなことをプレイヤーはしないといけない、

そんなことを肝に銘じておかないといけないと感じる瞬間だったのです。

だから、私も5曲目の「象」を演奏するときは体を張っての演奏ですよ?

 

 

さて、珍しい体験を2つ。

いや、上記に書いてあることも大概珍しいのですけども、

もっと凄いことがありました。

 

まず1つ目、2005年に行った公演。

これ、技術指導している高校のクラブの定期演奏会でした。

演奏はクラブの部員、私は指導者として接しただけでなく、

なんとピアニストとして出演しました。

そりゃあ、大変でしたよ。

いくらピアニストでもある私としても、これは本当に大変でした。

だって、弾くだけでなく、指導もしないといけなかったのですからねえ。

でも、この体験、当時の部員たちには大きな財産だったようでして、

いいことをしたなあと、音楽教育者としては記憶に残っています。

 

もう一つは2009年1月のニューイヤーコンサートでの公演。

なんと、コントラバスとナレーションを兼任したのでした。

ただ、どう考えても全てのナレーションをこなすことは不可能でしたので、

第1ピアノを担当していただいていた方にもお願いしました。

ということで、ダブルナレーションというスタイルでした。 

大変でしたけど、これがおもしろかった!

この時は2日間2回公演でしたから、そりゃもう楽しくって楽しくって。

新年早々気分のいいものでしたよ。

 

 

私が音楽活動をしていく最中、実は自信を失ったり迷ったり、そんな時期もあったのですが、

不思議とこの「動物の謝肉祭」に出合ってからは、そんな不安定なものがなくなっていったように思います。

そして、現在「あにまる・お~けすとら」は2008年公演を最後に活動休止中。

オリジナルメンバーから「またやりたいねえ」と言われて、怠慢な楽団代表は反省モード。

復活しないといけないのはわかっているのですが、果たしてどうなることか。

 

2013.5.1