vol.28 グリーンスリーブス

グリーンスリーブス(Greensleeves)は、よく知られたイギリスの民謡です。

正確にはイングランドの民謡というべきでしょうか。

この民謡、案外謎が多いのです。

まず、作者がわからないということ。

でも、起源は相当に古く、なんでも口伝鈔で16世紀には受け継がれていて、

今日では誰もが知っている曲となっています。

 

 

さて、この曲、演奏上で困ったことがあります。

下記の譜面は、グリーンスリーブスの楽譜です。

これを基に困ったことを論じてみたいと思います。

 

 

 

譜面にある音名をイタリア語で表記すると、

♪ソ|シ♭ードレーレ|ドーラファーソラ~

となるのですが、太文字の音が譜面によっては、ミ♭になっているものがあるのです。

 

他にも、3小節目だと、

♪シ♭ーソソーファ♯ソ~

となるのですが、太文字の音に♯がないものもあったり。

 

これはどうなっているんだ?

まあ、曲が最初に出来たとき、それを楽譜に記録しないで、口伝鈔によって広まったことによって起こった謎なのでしょうか?

不勉強な私は、この謎を解決していませんけどね。

 

 

クヌート・ギュットラー
クヌート・ギュットラー

一見どうでもいい話のようなのですが、

私がどうしても気になった理由は、

9月27日に予定していますBasso Cantabile(バッソ・カンタービレ)公演で、

クヌート・ギュットラー/グリーンスリーブスの主題による変奏曲を演奏するからなのです。

ギュットラー(Knut Guettler 1943-2013)はノルウェーのコントラバス奏者で、

この曲は1977年に無伴奏コントラバスのために作曲、

そして、なんとバレリーナの踊りを伴って発表された曲。

 

そう、ギュットラーが作曲したこの曲では、元の主題が、上記にある譜面とやや違うのです。

この違和感を解決しようとは考えたのですが、主題の後に続く変奏部分までいろいろと変更をしなければならず、

そうなると、技巧上難しい問題が起こってしまうのです。

作曲者が存命ならば、この謎を解決したく問い合わせたいものですが、

残念ながら昨年亡くなられたので、そうもいきません。

ということで、結局はそのまま演奏します。

私はこれまでにこの曲を何度も取り上げてきていますが、

有名な旋律を即興的に変奏していく様は、コントラバスの可能性を聞き手に示しているように見えてきまして、

演奏上実に効果的な音楽です。

 

 

レイフ・ヴォーン・ウィリアムス
レイフ・ヴォーン・ウィリアムス

話は脱線しますが、グリーンスリーブスから派生したクラシック音楽はいろいろとありまして、有名なのは、

レイフ・ヴォーン・ウィリアムス(Ralph Vaughan Williams 1872-1958)が作曲した

グリーンスリーブスによる幻想曲」でしょう。

美しい弦楽合奏の曲(あ、実はフルートとハープが入っていますけど)で、とても魅力的。

演奏時間は5分弱ですから、クラシック音楽ビギナーでもすぐに気に入っていただける曲ですよ。

おすすめです。

 

 

 

 

2014.8.5