vol.61 クーセヴィツキー生誕150年

セルゲイ・クーセヴィツキー
セルゲイ・クーセヴィツキー

2024年は、ロシア出身の指揮者でコントラバス奏者だった、

セルゲイ・クーセヴィツキー(1874-1951)の生誕150年にあたります。

彼は指揮者としての活躍が非常に目立つのですが、

短い期間ですが、コントラバス奏者として活動していた時期がありました。

 

私自身、コントラバスを学ぶ者として、

彼が残したコントラバスのための作品をよく演奏してきた期間がありました。

最近は演奏する機会がなかったのですが、

生誕150年という契機に、

彼のコントラバスとの関りを追ってみたいと思っています。

 

 

コントラバスを弾くクーセヴィツキー
コントラバスを弾くクーセヴィツキー

<作曲された作品は5曲>

作曲家としてのクーセヴィツキー、

自身がコントラバス奏者だったことから、

現存する作品5曲が全てコントラバスのための作品。

協奏曲が1曲のみ

・コントラバス協奏曲 嬰ヘ短調 Op.3

 

そして、コントラバスとピアノのための小品が4曲

・アンダンテ Op.1-1

・小さなワルツ Op.1-2

・悲しみの歌 Op.2

・ユモレスク Op.4

 

私はまだアンダンテとユモレスクは弾いたことがないのですが、

それ以外の3曲は何度も弾いた経験があります。

ここでは、コントラバス協奏曲について書きます。

 

 

<コントラバス協奏曲を勝手に分析>

この曲、冒頭のホルンの旋律から実にインパクトのあるもので、

これで聞いている人の掴みはOK、みたいなところが私は気に入っているのですが、

過去にピアノ伴奏版で演奏の際、よくピアニストさんから言われたことがありました。

「この曲、どこかで聞いたことのある旋律のような気がする」

 

冒頭の旋律の形、実は次の歌謡曲の旋律に極めて似ているのでした。

歌いだすところの「♪子どもたちが~」がまさにその部分。

1979年にリリースされた曲ですから、

クーセヴィツキーのコンチェルトとは作曲時期が75年くらいの幅があります。

勿論、これは完全に偶然の一致です。

ただ、クーセヴィツキーのコンチェルトでは、

この「♪子どもたちが~」のモティーフがたくさん出現してきます。

勿論、多少の変型はあるものの、私の数えたところ、

合計41回は出現すると考えています(第1楽章:22回 第3楽章:19回)

もしもオーケストラ版で演奏する機会があったら、

この「♪子どもたちが~」モティーフをしっかりと意識して演奏してもらいたいなあ。

ただ、演奏者が笑ってしまって演奏にならない、

あるいはお客様の中から笑い声が聞こえてくるかもしれないという危険が孕んでいますが。

 

 

<編曲作品があります>

あまり知られていないことですが、

クーセヴィツキーが別の作品をコントラバスのために編曲した作品があるのです。

まずは、ラフマニノフの有名な作品である「ヴォカリーズ」

ちょうど、CDがリリースされました。

その作品情報はこちらをクリックしてみてください。

 

そして、ブルッフのチェロの作品である「コル・ニドライ」もあるようです。

これらの編曲作品の特徴、

コントラバスの独奏として聴き映えがあるように調性を変更していること。

私自身は原調でしかそれらの曲を弾いたことがなかったのですが、

一度は挑戦してみてもいいかと思っています。

 

 

レインゴリト・グリエール
レインゴリト・グリエール

<クーセヴィツキーに献呈された曲>

これが結構あるのですよ。

私が演奏したことがある作品では、

ウクライナのキーウ出身のレインゴリト・グリエール(1875-1956)が書いた

コントラバスとピアノのための作品がありまして、

1902年に作曲された2つの小品と

1908年に作曲された2つの小品の合計4曲。

これらの4曲はコントラバス業界では極めてよく演奏される曲でして、

私もよく演奏してきました。

2023年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻を契機に、

私は彼の作品をウクライナ支援の一環として再び演奏するようになりました。

(私が過去にグリエールについてコラムを書いています。こちらを参照してください。)

 

他にもいろいろと献呈された曲はあるのですが、ここで注目したい作品があります。

それは日本人の作品、

大澤壽人(1906-1953)がボストン留学期の1934年に作曲したコントラバス協奏曲

(作曲家について、作品についての詳細な解説はリンク先をクリックしてご覧ください)

この曲、実は献呈されたクーセヴィツキーは弾いていないと思われます。

というのも、初演データは2017年の日本ということ。

それ以降、どこかで演奏されたという噂は耳にしていません。

さあ、クーセヴィツキー生誕150年を契機に、演奏される機会が出現するのでしょうか?

初演の演奏を聞けなかった私、これは、CD購入が必要なのでしょうか?

 

 

以上、いろいろとクーセヴィツキーとコントラバスに関連したことを書いてみました。

これを書いている時期は生誕150年を迎える数日前の2023年12月末。

果たして、2024年にはどんなクーセヴィツキー体験が待っているのか、来ないのか?

そして、2025年以降はどんなクーセヴィツキー体験が出現するのか?

私はじっくりと勉強をしておこうと思っています。

 

2023.12.22